企業インタビュー
環境衛生薬品株式会社へのインタビューを行いました
2026年01月15日 山城地域 : 精華町

環境衛生薬品株式会社
代表取締役社長 長沼様(1列目中央)
衛生検査事業部 部長代理 澤田様(4列目左)と
けいはんな事業所で働かれている従業員の方々
1.事業概要
事業概要について教えてください。
当社は1962年(昭和37年)に大阪市西区にて創業した、衛生管理をトータルサポートする企業です。創業当初は、保健所向けに消毒薬や殺虫剤などを卸す薬品卸売業を行っていたのですが、時代の変化とともに、保健所が担っていた消毒業務が民間に移管されるようになり、当社も大きな転換点を迎えました。そこで始めたのが、自社で薬品を使用して有害生物を防除する「ペストコントロール」事業です。
当時の害虫駆除機材「スイングフォグ」事業内容がかなり幅広いですが、ペストコントロールが基幹事業なんですね。
そうです。ネズミ、ゴキブリ、蚊などの感染症を媒介する有害生物を防除するペストコントロールから、次第に、目に見えない生物、つまり微生物のコントロールに関する依頼が増え、病院の手術室などの殺菌消毒業務を開始しました。事業の対象が、目に見える生物から、目に見えない生物にまで拡大したんです。
そこから更に様々な事業へと派生していったのでしょうか。
病院の院内感染対策をするうちに、「菌そのものを調べられないか」というご相談が増え、そこで、菌の種類と数を調べる「菌の同定」サービスを開始しました。更にこの技術を応用して、新たに食品検査部門も立ち上げました。食品検査では、商品の消費・賞味期限を決めるために、菌数の変動を調べる日持ち検査などの細菌検査を始め、異物検査、栄養成分分析、店舗衛生検査など、内容は多岐に渡ります。京都だと、茶の残留農薬分析を行うことも多いですね。

まだまだ派生がありそうですね、、、?
まだあるんです(笑)食品検査の知見を活かして臨床検査事業にも進出し、山城南第1号の登録衛生検査所になりました。臨床検査では、従来の検便や尿検査に加え、新型コロナウイルスの感染拡大時には、PCR検査センターとして地域の検査体制を支えました。他にも、水質や空気環境などの環境測定も行っており、作業環境測定は全項目の資格を保有しています。また、病院の手術室の消毒業務から発展し、現在は病院内のクリーンルーム、集中治療室(ICU)、再生医療分野の細胞加工室などでも清浄度測定や消毒等、清浄度維持管理業務を実施しています。加えて、造園・緑化工事も手掛けています。これは意外かもしれませんが、工場などでの害虫対策を行う中で、敷地の植栽管理が虫の発生に大きく関わることから、造園緑化部門を設置したものです。紹介しきれない取組もまだ多くありますが、現場の課題に向き合う中で、当社の事業幅が自然と広がっていきました。
すごいです! 事業のつながりがよく分かりました。
当社の多様な事業内容は、闇雲に拡大したものではなく、既存事業との繋がりを持ち、顧客からの「こんなことはできないか」という要望に応え続けてきた結果なんです。創業時は従業員が20名程度でしたが、精華町に立地してから事業の幅が大きく広がり、今は当時の3倍以上である70名が在籍しています。一見すると”色々なことをしている会社”に思われるかもしれませんが、根底にあるのは一貫して『衛生で人々の生活を守る』という想いであり、そこから広がった事業内容の幅が当社の強みになります。

売上が大きいのはどの分野になるんでしょう。
元々は、ペストコントロールが当社の基幹事業でしたが、近年は医療分野向けの清浄度維持管理業務が大きく伸びてきています。北海道から沖縄まで、現地の協力会社と連携しながら対応していますが、専門性の高い業務ですので、全てを外注するのではなく、当社が技術面・品質面の管理を担い、現場を監督する体制を取っています。最近では特に、医薬品部門や再生医療分野との連携を強化しており、一例として、iPS細胞研究所(CiRA)の衛生管理業務は、当社が全て受託しています。衛生管理業務では、細胞培養の環境を頻繁かつ継続的に検査・管理する必要があるので、研究所との物理的な距離の近さが重要になります。結果的に、京都に立地したことが良いご縁に繋がったと感じています。
御社は国内で唯一の昆虫モデルによる受託研究サービスも
されていますね。
そうですね。当社では、ショウジョウバエを使った分子生物学的な検査・研究にも取り組んでいます。遺伝子操作によって、がんやアルツハイマー病などの疾患モデルを持つショウジョウバエを作り、特定の物質を与えて症状が改善するかを検証します。効果が確認できれば、新しい医薬品開発につながる可能性があります。当初は国内では理解されにくく、日本の医薬品業界ではほとんど注目されませんでしたが、最近では食品会社様からの研究受託が増えてきています。例えば、「体力回復」などを謳った健康食品をショウジョウバエに与え、運動能力を測る試験などを実施しています。

なぜショウジョウバエに注目されたのでしょうか。
元々は害虫を駆除する会社ですが、「駆除するだけでなく、研究などに有効活用できないか」という発想から、約20年前にこの取組を始めました。また、人とショウジョウバエは遺伝子の約75%が共通していることや、近年は実験動物のコストや倫理面の課題もあり、その代替モデルとしてショウジョウバエに注目しました。ショウジョウバエの寿命は2週間と短いので、短期間で結果を得ることができ、飼育も容易です。海外ではこうした研究が先行していますが、日本ではまだまだ前例が少ない分野です。その分、当社としては事業領域の大きい分野であり、将来への投資として、長年積み重ねてきた知見がある点は、他社にない強みだと考えています。

研究に加えて、御社では性能試験も実施されていますね。
はい。当社では性能試験として、主に昆虫を対象にした各種試験を行っています。例えば、新しく開発された殺虫剤や忌避剤について、「実際にどの程度効果があるのか」を検証したりしています。試験に使用する昆虫は、基本的には実験用として供給されている個体を使用していますが、市場で入手できない虫については、自社で捕獲することもあります。例えばムカデなどは、一定の数をそろえるのが難しく、従業員が山に入って採集するケースもあります。そのため、当社には自然と「虫に強い」人材がそろっているんです(笑)自然環境に近い立地だからこそ、対応できる試験も多いと感じています。
こうした事業を進める上で、大切にされていることはありますか。
やはり、地域で事業活動をさせていただいている以上、地域社会への貢献を大切にしています。その一環として、地元の中学生や高校生を受け入れ、食品検査や昆虫同定などを実際に体験してもらう取り組みを行っています。こうした経験を通じて、「将来、この会社のことを思い出し、就職先として戻ってきてくれれば嬉しい」という思いがあります。若い頃から地元の企業や仕事に触れることで、将来的にこの地域に戻るきっかけとなり、人口や税収の増加を通じて地域が元気になればと思っています。
職業体験をした子供たちからの感想文
このような考えの企業があるのは、地域にとって本当に心強いと思います。
他にも、2012年に建設した関西学研ラボラトリーでは、隣接する会議室の扉を開放すると約100人が入れる広さになり、災害時には地域の方に避難場所として使っていただけるようになっています。2011年の東日本大震災をきっかけに、「地域にはこうした場所が必要だ」と考え、会長が特に力をいれて整備したものです。この地域で商売をさせてもらっている以上は、利益を出し、きちんと納税し、そのお金が地域のサービスとして還元される循環を大切にすべきだと思っています。地域貢献を通じて良い会社になれば、その結果として従業員も幸せになる。それが企業としての本来の姿だと思っています。

従業員の方が働きやすい環境づくりにも、力を入れていらっしゃるのでしょうか。
従業員が長く働き続けられる環境づくりは、当社としてとても大切にしています。特に子育て中の社員については、保育園や学校からの急な呼び出しや、夏休み期間中などは、子どもを職場に連れてきてもらうこともあります。会議室で映画を見たり、勉強をしたりして過ごしてもらい、その間、保護者は仕事を続けることができます。会長も子ども好きなので、会社ぐるみで子どもを見守るような、自然とそういう雰囲気になっています。
定着率も良さそうですね。
そうですね。従業員の定着率は9割以上で、現在、社員の約4割が女性ですが、多くが出産後に復職し、子どもが2,3人いる社員もいます。子育ては女性だけが担うものではありませんが、現実的には女性の負担が大きくなりがちです。だからこそ、出産や育児を理由に仕事を諦めなくていい環境を整えたいと思っています。せっかくこの会社で技術を磨き、成長してくれた社員には、ライフステージが変わっても戻ってきてくれたら嬉しいですし、そのためにも、戻りやすく、続けやすい職場であることを常に意識しています。
2.京都府について
本社が大阪府にある御社が、京都府(精華町)に立地した経緯について教えてください。
当初は大阪市内で探していたのですが、やはり大阪市内は土地単価が非常に高く、なおかつ広い土地もないという状況でした。そうした背景から、関西圏で研究所用の拠点を探していたところ、たまたま学研都市に進出できるチャンスに恵まれました。学研都市はネームバリューも高く、当社にとっては非常に企業価値を高めることができると思い、学研都市に拠点を構えることになりました。
京都府(精華町)に立地して良かったと感じることは何ですか。
精華町の魅力は、まずアクセスの良さだと思います。大阪や奈良、京都市内のいずれへも移動しやすく、関西圏での取引が多い当社にとっては、大変便利に感じています。東京へも京都駅まで出れば新幹線でそのまま行けるので、東京支社との往来も非常にスムーズです。
また、台風や洪水、地震の影響を受けにくく、安定した事業活動を行えるため、災害リスクが比較的低い点も、重要なポイントだと感じています。さらに、精華町の住環境も魅力の1つだと思います。適度に自然があり、落ち着いた環境で、保育所や学校などの子育て環境も非常に整っています。当社の従業員の中には、「けいはんな記念公園が好きでよく遊びに訪れており、精華町に憧れて移住してきた」という方もいるくらいです。それだけ住環境や住民サービスが評価されているのだと思います。

地域企業とのつながりなどはありますか。
当社が立地する関西文化学術研究都市の精華・西木津地区には、企業の研究所や製造拠点が集積しています。SLE(けいはんな学研都市精華地区まちづくり協議会)に入会しており、そういった場などをきっかけに関係が生まれ、作業環境測定や化学物質に関する相談、防虫対策などでお仕事をいただくようになりました。やはりこの近場というのは、お互いにとって大きなメリットであり、地域のネットワークを通じて取引が生まれている点は、精華町に拠点を置く強みだと思います。
3.これからの展望について
御社のこれからの展望について教えてください。
当社では、近年特に成長が著しい医療分野への取り組みを今後さらに強化していきたいと考えています。その一環として、「メディカルソリューションラボラトリー」という新たな研究所の建設を計画しています。具体的には、再生医療の細胞加工施設を整備し、細胞加工・培養技術のトレーニングを実施したり、サービス開発、受託試験などを行う拠点として活用していきたいと考えています。この新研究所を通じて、医療分野への貢献を広げながら、会社としてさらに成長していきたいと思っています。

4.京都府へ立地を検討している企業へのメッセージ
京都府へ立地を検討している企業へのメッセージをお願いします。
当社が立地している精華町に限っていうと、先ほどお話ししたように、関西圏へのアクセスが非常に良く、公共交通機関も充実しており、住環境が素晴らしい。最近は色々な店舗が出店しているので、日常生活に必要なものが町内でほぼ完結できるほど便利になっています。また、精華町役場の皆さんは、非常に丁寧で前向きな対応をしていただいていると感じています。当社が立地する際には補助金の支援もいただき、企業として本当にありがたかったです。精華町は、ビジネスと普段の生活、両方が充実する町だと思います。
